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世の中を良くするリーダーを育てる
ハイフェッツのリーダーシッププログラム
日テレHRシニアコンサルタント
吉田和生

ビジネスモデルが激しく変化する中、企業も変わっていかなくてはならない。そのためには自発的に課題を見つけ、会社を巻き込み、実現していく次世代リーダーを育成する必要がある。とはいえ、10人程度の部下を率いていた社員が、一段上がって100人規模の部署のチームリーダーとなり、成果を出すのは決して容易なことではない。

リーダーシップ分野において米国トップの権威であり、現在も米国内外の政府や一流企業にコンサルティングを行うロナルド・ハイフェッツ教授の「アダプティブリーダーシップ(ハイフェッツ論)」は、25年間に渡りハーバード大学ケネディスクールで「生徒が選ぶNo1授業」に選ばれた講座。「ケネディスクールで受講した全プログラムの中で、人生で最も影響を受けた授業」という受講者が続出。たった1つの理論を学ぶことで、あらゆる業界においてリーダーとしての課題解決スキルが飛躍的に上がると言われている。

ハイフェッツ教授に直接学び全面的に講座実施を認められた唯一の日本人、HRシニアコンサルタントの吉田和生さんがハイフェッツ論をなぜ、学ぶようになったのか? 授業でなにか起こったのか?直接伺いました。

目的を突き詰めたら、MBAではなく「人生で最も影響を受けた授業」にたどり着いた

私がMBAを志したのは30歳の時です。新卒で日本テレビに就職し、「日テレを通じて日本を良くしたい」という想いがあり、そのためには何が必要か。この先、会社をより良い方向に導いていく人材になるには、今の自分にはスキルもプレゼンスも足りない。そう考えた時に「理論と実践」、つまり、MBAの理論を叩き込んで、リーダーとしての場数を踏むというキャリア設計をしました。

学ぶならトップクラスの大学院だと思い、猛勉強の末、海外のスクールに出願。その結果いくつかの大学院に合格したのですが、各大学のプログラムを見比べると、ハーバード大学ケネディスクールにはリーダーシップの大家であるロナルド・ハイフェッツ教授の講座「アダプティブリーダーシップ(ハイフェッツ論)」がありその授業こそ自分に必要ではないかと考えました。この講座は歴代のケネディスクール卒業生が作っている「各講座の講評冊子」でも抜群の評価で、ビジネス分野に限定されない、あらゆる課題を解決できる人材(アダプティブリーダー)を育成するもの。大統領や首相、グローバルな非営利団体、企業のCEOやエグゼクティブなど多数の著名人が学んだことでも知られていました。

当初、目指していたのはビジネススクールで「Master of Business Administration(MBA・経営学修士)」を取得することでしたが、ハーバード大学ケネディスクールは行政大学院なので、取得できる学位は「Master of Public Administration(MPA・公共経営学修士)」になります。B(Business)とP(Public )の違いで、MBAがビジネスのプロフェッショナルを育成するのに対し、MPAは公共政策分野のプロフェッショナルを育成することを目的としていました。30年のリーダーシップ研究に基づいたハイフェッツの再現性の高いフレームワークと効果的なアプローチはほかにはないものだと、私は惹きつけられMBAではなくMPAを選択しました。

そもそも、私が学ぶ目的は「日テレを通じて日本を良くする」ということ。この原点に立ち返ったとき、MBAにこだわらず、一番、役に立つのはやはりこの講座だ。そう考えてハイフェッツ教授から直接学ぶためにケネディスクールへの入学を決めました。

リーダーシップは「世界を良くするため」に生みだされた再現性の高いロジック

ハイフェッツ論を学ぶことで得られるのは、ビジネス分野向けにわかりやすく言語化するとすれば、「部下を率いて、上司を助け、会社の課題を発見し、解決して、実現するスキル」です。ハイフェッツ論は技術なので、この理論を学ぶことで、国や業界、職種を問わず、すべての課題が解決できるように作られています。ロジックツリーやコーチングといったスキルや、会社経営や部下のマネジメントといったメソッドなど、あらゆる要素が含まれている点もすばらしいのですが、それだけでは終わらない。最終的にどうやって人を巻き込んで動かしていくか、という実現するためのHOWTOまで入っている点が特徴です。

ではなぜ、ハイフェッツ論がMBAでなくMPAの講座なのか。

それはハイフェッツがこの理論を作った理由に答えがあります。ハイフェッツは元々、ハーバードメディカルスクールを卒業した優秀な精神科医だったのですが、刑務所で受刑者のメンタルサポートをしていた時、人種も育った場所も様々な受刑者に、「貧困」と「家庭の崩壊」という2つの共通する問題点があることを知ります。自分ひとりのサポートでは、問題を抱えるすべての人を救うことは難しい。では、彼らを救うために自分にできることはなにか。考えた末、ハイフェッツは社会的な課題を解決できる真のリーダーを育てれば、世の中の「貧困」と「家庭の崩壊」という問題も解決し、彼らのような人々は生まれないということに思い至ります。そのためのロジックを生み出そうとしてできたのが、ハイフェッツ論でありMPAの講座として展開されているわけです。

「理論と実践」の参加型の授業で世界中から集まった生徒3000人の課題を解決

実際のハイフェッツの授業では、そのフレームワークを学んだ上で、課題解決のフォーマットに従ってチームで各自が持ち込んだリーダーシップの課題を解決するための議論をし、発表。それをハイフェッツが解説するというケーススタディを繰り返していきます。その結果、講座が終わる頃には、国も年齢も立場も異なる生徒100人全員が、「課題をこういう方法で解いていく」「解くべきだった」というように、ハイフェッツ論に基づいた解決策を手にすることになります。私自身も自分の持っていった課題に対し、「あの時の会議の発言が良くなかった」という具体的なレベルで分かり、解決策を得ることができましたが、ハーバードではこれまで30年間、約3000人がこの授業を受け、明確な解決策を持ち帰っています。つまり、ハイフェッツ論は3000個の課題を解決した実績があるのです。

ただし、1つだけもったいない点があるとすれば、ハーバードでの授業の場合、皆、実務を離れて来ているため、「ここをこういうふうにすべきだった」という過去のリーダーシップになっているということ。もちろん、皆、卒業後に自分の持ち場に持ち帰って活躍していくのですが、私が日本で行っているのは企業・社会人向けの講座なので、現在進行系で課題解決をすることが可能です。今、自分が抱えている課題に対し、講座で学んだ課題解決の方法を即、実践することができるのです。

「講座で議論すれば解決できる」という期待から、本気の課題を持ってくる

日本での講座も本場の授業と同様、フレームワークとケーススタディを繰り返します。ハイフェッツ論のエッセンスを抜き出して、8時間×3日間、計24時間で学びます。ケーススタディは実際に過去に起こったケースを使って行うものありますが、各自、自分の課題を持ってきてもらい、フレームワークに従いチームで議論し、発表してもらいます。そして授業が進むうちに何が起こるかと言うと、皆さん、可能な限り、今、抱えているガチな課題を持って来るようになります。これは「講座で議論をすると解決するだろう」という期待値が上がっていくからです。持ち込まれる課題は、売上アップという数値化されたタスクから、海外現地法人でのマネジメントの問題、上司と反りが合わないといったことまで内容は様々ですが、そのどれもが本気で課題を解決したい、芯を食ったものばかりでした。

ハイフェッツ論は社長クラスから若手まで、幅広い世代の課題に対応できるものですが、特に30代、40代の次世代リーダーの育成に役立つと感じています。ゼロベースより、一度、小さな規模でも部下をマネジメントする立場に立ち、もがいた経験がある方が腹落ちします。成功でも失敗でも、その経験をハイフェッツ論に当てはめると、「ああ、なるほど」とその原因に気がつくことができ、具体的な解決策を見つけることができるからです。

ハーバードの卒業式で卒業生に送られる言葉に、印象的なものがあります。
「諸君、世界を良くする方法は一つしかない。それは今、ここから、一人ひとりがそれぞれの持ち場に帰って、その持ち場を少し良くすること。その積み重ねだけが、世界を良くする唯一の方法だ。諸君の健闘を祈る」

日本においても、課題を解決できる人が育てば、世の中は必ず良くなる。これは「日テレを通じて日本を良くする」という私の目標にも通じるのですが、受講生がそれぞれの会社を少し良くしていけば、必ず世界が良くなると思っています。
そんな想いから、授業の最後には受講生の皆さんに「世の中を良くしよう」とエールを送っています。

吉田 和生

2014年ハーバード・ケネディスクール修了。日本テレビ放送網株式会社に在籍し、営業、編成、制作を経て経営企画部で(株)オールアバウト社との資本業務提携を担当。現在は対象会社に出向し、EC新規事業を行っている。制作部門では35歳、史上最年長ADからキャリアをスタート。1年後にプロデューサーとなり、2年間で約20の番組プロデュースをおこなう。

リーダーシップ分野において米国トップの権威であり、現在も米国内外の政府や一流企業にコンサルティングを行うロナルド・ハイフェッツ教授に学び、全面的に講座実施を認められた唯一の日本人。