今、求められている営業スタイルとロープレの重要性

世の中には物やサービスが溢れ、市場の競争はますます激化するばかり。買い手であるお客様はIT技術の発展により、自社の課題を解決するために有効な手段を、自らの力で迅速かつ正確に手に入れられるようになっています。そんな時代の流れとともに、求められる営業スタイルのあり方にも大きな変化が見られるようになりました。従来は、お客様から提示されたニーズに対して解決方法を提案するソリューション営業が主流でしたが、現在は、お客様自身の潜在的なニーズを営業が提示するインサイト営業が主流に。では、インサイト営業を成功させる秘訣とは何なのでしょうか。その要と言えるのが、お客様の置かれている現状を客観的に把握し、お客様に本当に必要なサービスや商品は何かを考える力。お客様を深く理解するために、人間関係を良好に築くためのより高いコミュニケーション能力が必要不可欠であると言えます。それらの力を養うのに有効な手段の一つとして挙げられるのがロープレ(ロールプレイング)研修。営業力の底上げを狙うなら、習慣的に取り入れて、全メンバーのスキルアップを図りたいものですね。そこで今回は、営業職におけるロープレの基礎知識からロープレを効果的に行うポイントまでを詳しくご紹介します。

ロープレ(ロールプレイング)研修とは


営業職など、コミュニケーション力を必要とする職種の研修として用いられることの多いロープレ(ロールプレイング)研修。そもそもロープレとは、role(役割)をplaying(演じる)の略で、アメリカ人でルーマニア出身のモレノ(Moreno)が始めたサイコドラマ(psychodrama)が発展したもの。現実に近い場面を設定し、特定の役割を演じる疑似体験を通じて、物事を考える際の客観性を高め、何か事柄が起こった時に適切に対応するための力をつけることができるといった効果が期待できます。その重要性は様々な場所で認められ、新人研修のみならず、全営業マンのスキルアップのために用いる企業も多く見られます。では、どうすれば、効果的なロープレを行うことができるのでしょうか。ここからは、ロールプレを行うことで得られるメリット、ロープレの種類とそれぞれの狙い、効率的にロープレを行うポイントなどを具体的に見ていきましょう。

ロールプの目的とメリット


営業職におけるロープレは、営業スキルの向上を目的として行います。営業マン役とお客様役、ロープレを観察しフィードバックを行う第三者を置いて行う方法が一般的で、実際の商談の場にできるだけ近い形を設定し、あらかじめ設けておいた制限時間内で練習を行いましょう。

日々の忙しい業務の中で、ロープレ研修に取り組んでいくとなると、数をこなす事だけに注力してしまったり、型にハマったロープレを機会的に繰り返すといった状況に陥りがちですが、漠然とロープレを繰り返すだけでは、何の効果も得られず、時間を浪費することにもつながりかねません。効果的なロープレを行うためには、指導する立場の人も研修を受ける立場の人も、ロープレを行う目的やメリットをしっかりと把握しておく事が非常に重要なポイントです。

ロープレを行う事で得られるメリットの代表的なものとして、以下のような4つが挙げられます。

メリット1.

商談の場の雰囲気に慣れ、自信をつけることができる

お客様が信頼できる営業マンに求められる条件の1つに「営業マン自身が自信を持って、お客様と向き合うことができる」という事が挙げられます。一方で、新人営業マンは経験の少なさから、飛び込み営業が怖い、基本的な言葉が出てこない、必要以上に表情が硬いなど、初歩的な部分でつまずき、自信を失いがち。ロープレで事前に場数を踏んでおくことができれば、どのような振る舞いやトークを展開すれば、お客様とよりスムーズなコミュニケーションが取れるかをあらかじめ肌で感じることができます。また事前に練習にしっかり取り組み、成功体験を積み重ねたという裏付けが営業マンの精神的支柱となり、実際の商談の場での自信につながるのです。

メリット2.

ウィークポイントの洗い出しと克服ができる

商談には、テレアポ、初回訪問(人間関係の構築)、ニーズ把握、提案(商品説明)、検討、クロージングといった様々なステップがありますが、一連のステップをロープレで体験することで、営業マンは自分のウィークポイントを把握することができます。またロープレを観察しフィードバックを行なってくれる第3者をおくことで、自分では気づいていない、ウィークポイントを指摘してもらえるのも大きなメリット。苦手なプロセスのみを切り出して、繰り返し練習を行ったり、商談前にその部分に関する事前準備を手厚くするなどの対策を取ることも可能になる事で、商談の成功確率をUPさせることができるのです。

メリット3.

お客様の立場を体験することで、視点を変えて物事を考えるきっかけが得られる

営業にも飛び込み営業、ルート営業、法人営業など様々な種類がありますが「お客様の立場に立って考える」姿勢は、どの営業にも共通して欠かせないポイント。ロープレにおいて、お客様の背景や課題設定を可能な限り現実に近いものに設定した上で、お客様として営業を受けてみることで、提案を聞いている時のお客様の心情や資料の過不足、疑問点などを実感することができるのです。お客様の立場でロープレを習慣的に行うことは、売り手としての視点だけでなく、買い手としての視点を常に持ち提案を考えるという、営業マンにとって、非常に重要なマインドセットにつながるのです。

メリット4.

ノウハウを共有することができる

忙しい日々の中で、商談の場に同行したり、ノウハウを共有する資料を作成するのはなかなか難しいもの。そこで有効なのが、他のメンバーがロープレを行なっているのを見学し、営業マン自らがノウハウを会得すること。高成績の営業メンバーのロープレでは、なぜ高い成績が残せるのかの秘訣を探ることができますし、営業歴が長い営業マンが若手営業マンのロープレをみることで、営業手法のマンネリを打破したり、新しい視点が生まれる可能性も。年次や立場を超えて、ロープレ研修を受けたり、見学をする機会を設けることで、効率良くノウハウを共有し、営業力の底上げを図ることができるのです。

ロープレの種類とそれぞれの狙い


ロープレにも種類があり、得たいメリットに合わせて使い分ける事でより高い効果を上げることができます。ここからは、ロープレの代表的な4種類とそれぞれのロープレで得られるメリットを簡単にご紹介します。

⒈ ケースロープレ

その名の通り、商談におけるステップの各段階や特定の顧客などを仮に想定し、そのケースに基づいて、ロールプレイングを行う方法。ケースの内容設定によっては、短時間で繰り返し練習を行う事もできるので、効率的にスキルを身に付けたい場合に有効です。

⒉ リアルロープレ

実際に起きている商談の事例をテーマに設定し、ロールプレイングを行う方法。長期的な視点でのスキルの会得だけでなく、現実的に直面している問題の解決に即役立つといったメリットがあります。

⒊ モデリング型ロープレ

代表の営業マンが全員の前でロープレを実施し、それを他メンバーが見て学ぶ方法。高成績の営業マンにロープレを行なってもらう事で、そのノウハウを他のメンバーが吸収することが可能になります。

⒋ グループロープレ

グループごとに分かれ、同じテーマで営業マン役お客様役と役割を交代しながら、ロープレを行う方法。営業マン役は何度も同じテーマを繰り返すことで、トークの展開や発言に自信が持てるように。またお客様役を体験する事で、お客様の視点に立った発見を得られるといったメリットが期待できます。

より確実に効率的なロープレを行いたい、様々な手法を積極的に取り入れたいといった場合は、営業に関する高いノウハウを持つ営業代行会社などに委託して、ロープレ研修実施するといった方法を取ることも可能です。
また、実際の商談の場では、言語情報はもちろん、相手の様子を観察することによって思考し、アジャスト力の高い提案をしていく力も求められます。
それに慣れるために、ケース設定において動画などを活用するというのも◎

効果的にロープレを行うポイント


ここまではロープレの目的やメリット、種類などを見てきましたが、ここからはより効果的なロープレを行うために、取り組む際の注意事項とフィードバックのポイントをご紹介します。以下の点を意識しながら取り組むことで、結果につながるロープレを実施することができます。

1.課題と目的を明確にして取り

今回取り組むロープレでどのようなスキルを得たいのか、どういった商談に活かしたいのかといったゴールを明確に設定し意識しながら取り組むことが、研修を受ける側、指導する側、どちらにとっても非常に重要なポイントです。

⒉ お客様のペルソナや背景情報をしっかりと設定する

営業マン役がロープレに取り組む姿勢を重視しがちですが、効果的なロープレを行えるか否かはお客様役の設定がしっかりとされているかどうかにかかっているといっても過言ではありません。お客様役が漠然とした設定のまま、ロープレをスタートしてしまうと、お客様役を演じる方もリアリティのある切り返しができず、簡単にアポを取ることができたり、クロージングできてしまうという展開に陥りがち。そんな事になってしまっては何のスキルアップにもつながりません。個人のお客様であれば、年齢、配偶者や子供の有無、職業、性格、趣味、居住地などを設定します。法人のお客様であれば事業内容、業績、規模などを設定します。個人のお客様、法人のお客様ともに、現在抱えている課題などもあらかじめ設定しておくことまでできればベスト。実際に営業を行ない、もう少しで商談がまとまりそうだったに、うまく行かなかったというお客様や苦手なお客様がいらっしゃる場合は、そのお客様を想定してロープレで演じてみるのも良いでしょう。

3.短時間で集中して行う

ロープレの時間が長くなってしまうと、目的やフィードバックする内容がブレてしまいがち。また一度に全てのことを吸収することは難しいので、今日はテレアポ、明日は初回訪問といった風に商談の各ステップを分解して、取り組むようにしましょう。短時間で集中して行うことを習慣化することが重要です。

4.演じるメンバーは、本番と同じ気持ちで挑む

せっかく時間を割いて行うロープレも、取り組むメンバーに「これは所詮ロープレだから」といった甘えや照れがあっては、ただの馴れ合いになってしまい、効果も半減してしまいます。演じるメンバーは、緊張感を持って本番と同様に取り組む姿勢が欠かせません。

次にフィードバックの際に、気をつけたいポイントを見ていきましょう。

⒈ 欠点ばかりを突くのではなく、建設的なアドバイスを行う

ロープレは、自信をつけて本番に挑むための疑似体験。フィードバックが欠点を突くようなものばかりでは、営業マンのやる気や自信を削いでしまい、逆効果にもなりかねません。遠慮や馴れ合いのフィードバックは不要ですが、できるだけ細かくシーンを切り取って、「良かった点」と「もっと良くなる点」を共有するようにしましょう。

⒉ 可能ならば動画や音声で記録し、振り返りを行う

自分が話しているときの表情や声のトーン、スピードなどを客観的に見直す機会は、なかなかないもの。実際の商談の場を記録することも通常は難しいですから、ロープレで動画や音声を記録して振り返ることは、非常に重要な気づきにつながります。表情を明るく柔らかくする、話すスピードを調整する、無駄な言葉やあやふやな表現をできるだけ省くなど、コミュニケーションのベースを整えるだけで、営業マンとしての心象を飛躍的にUPできる可能性があります。大きな労力のいる作業ではないので、是非取り入れてもらいたい手法です。

3.ミニマムのフィードバック項目を可視化しておく

1回のロープレでチェックするポイントを事前に可視化し、第三者はそれを確認しながら観察を行うようにしましょう。そうすることで、複数の観察者がいる場合は、同じチェック項目に関して、様々な視点のフィードバッグを得ることができます。また同じテーマのロープレを複数回行う際も、同じ切り口でフィードバックを積み上げていくことができるので、改善された点や継続して練習が必要な点をよりクリアに意識することが可能になります。

いかがでしたか。激しい市場争いを勝ち抜くために、習慣的にロープレを行うことで、営業に関わる全メンバーが、物事を客観的に捉える力や洞察力、高いコミュニケーション能力を常に高めていける環境を整えたいものですね。