イノベーションをうみだす!?企業の「非日常演出」

労働安全衛生法の改定により、今では労働者が50人以上の事業所ではストレスチェックの実施が義務付けられているほど、ストレスの管理や軽減は企業にとって重要な課題となっています。

厚生労働省による「企業のメンタルヘルス対策への取組状況」の調査によると(※厚生労働省発表 平成28 年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況) 取組内容のトップ3では、ストレスチェックの実施がダントツの1位。全事業所の約9割が実施しています。しかし、2位の「労働者への教育」、3位の「事業所内での相談体制の整備」は事業所規模が小さくなるにつれて実施比率が下がり、積極的な取組には至っていないなど、あくまでストレスチェックを実施して把握する、にとどまっているのが実態です。

一方で、企業においては離職率の高止まりが課題になっていたり、社員が気持ちよく働く環境整備とメンタルヘルスケアの対策遅れもあり企業におけるストレス予防策はなかなか打ち出されていません。

そんな中、メンタルヘルスケアの一つの打ち手として、注目を浴びているのが企業における「非日常」の演出。毎日決まった場所、決まった時間、決まった仕事...など、ルーティーンになりがちな企業人の「日常」に様々な方法で「非日常」を取り入れることはポジティブ心理学をはじめとした様々な心理学で推奨されています。

今回は、想定以上の脳への刺激とイノベーションを生むという企業の「非日常演出」について紹介します。

非日常空間の演出「オフサイトミーティング」


オフサイトミーティングは、日常と異なるリラックスした環境で会議を開催し意見交換をし、チームワークを高めることを目的としています。いつもの職場から離れたユニークな場所で自由に意見交換することで、風通しの良い組織づくりや、凝り固まった企業風土を解きほぐすことができます。

企業の近くのレンタル会議室やイベントスペースを使って手軽に会議を行う事もあれば、近頃はカラオケボックスのミーティングルームを使ってちょっとしたエンタメ感を演出する企業もあります。
また、すこし移動して海の見えるホテルの会議室を利用したり、古民家を借り切って会議をする企業もあるとか。

欧米では、すでにその効果から一般的になっており、国内でも年々導入する企業が増えているとか。 非日常空間が参加者にワクワク感をもたらし、その高揚感が脳の活性化につながり創造的なアイデアを生むため、オフィス内でのミーティングではなかなかでなかったような創造的なアイデアや新しい方向性が生まれることもあります。

また、半日や終日など多くの時間を要すると業務との調整が難しい、という企業にお勧めなのは「ランチミーティング」
場所はいつもの会議室のままですが、そこにケータリングや仕出しなどを注文してみんなでランチを囲みながらリラックスした空気の中で会議を開催します。必要なコストはランチ代だけという手軽さに加えて、時短勤務などオフサイトミーティングへの参加が難しい人でも参加できるのも特徴です。とはいえ、ランチは大切な休憩時間、という考え方がある場合は、ランチではなく「ハイティーミーティング」「カフェミーティング」など勤務時間中の会議に飲食をする非日常演出はもっと手軽になります。

特別なコンテンツや演出がなくても「場所を変えるだけ」「飲食をしながら会議するだけ」で出来る非日常空間はとても手軽に取り入れていただける演出です。

ワーク×バケーション「ワーケーション」


働きやすさの提供を目的としてリモートワークやサテライトオフィスの導入がすすむなか、非日常空間でリラックスしながら働いてイノベーションを生み出そうというのが、旅行先で仕事をする「ワーケーション」。ワーク×バケーションの造語で、文字通りバケーションしながら働くというワークスタイルです。

伊豆や箱根などの手軽な旅行先から、ハワイやグアムなどがっつり海外旅行まで、ネットワークとパソコンが使える環境で昼間は仕事して、朝や夜はバケーションを楽しむというスタイルが主なので、働く人本人のON/OFF切り替えがとても必要とされます。また企業側からすると労働時間管理の課題も多く、受け入れている会社はまだまだ少ないのが現状です。
一方でメリットも多く、勝手に個人の裁量だけで旅行に出かけているので、非日常演出のためにかかるコストはほとんどないのが大きな特徴です。制度設計だけきちんとするだけで、個人の裁量で再現できます。

また個人の裁量に任せない、といった点では石垣島や熱海などリゾート地にサテライトオフィスを作って、その指定されたオフィスを使いワーケーションを実行している企業もあります。

いずれにしても、個人のセルフマネジメントがこれを実行できるか否かのポイントになることは間違いないです。

リフレッシュ度◎「非日常型研修」


「非日常型研修」にチームビルディングなどの目的で、チーム全員で禅寺で修行や滝行を体験する研修や、無人島でサバイバル体験を行うなど体力も気力も必要とする体験型もあれば、テーマパークなどのキャスト体験を1日だけ行うなど通常とは違う業態の業務を経験することで気づきを得るものまで目的は様々です。

一方で、研修を実施すること=非日常である、と捉える人事教育担当の方も多く、お寺やテーマパークのように体験の場を大きくかえなくても、通常の研修設計の中にいかに「非日常感」をどれくらい取り入れられるかを綿密に設計することも多くなってきています。
ただの座学で詰め込み研修を行うのではなく、ゲームやアクティビティ、また映像素材やチップ、カード、すごろくなどツールを工夫してコミュニケーションを活性化させるケースも多くなってきています。

日常の中に「非日常演出」をどれだけ盛り込めるのか


昨今の大注目テーマである「働き方改革」は、企業にとってより大きな課題となっていくでしょう。採用においても、離職率の低下においても、企業イメージにとってもとても重要です。
その課題解決の打ち手の一つとして「非日常演出」をどれだけ社会生活の日常にいかに取り入れることができるかが大きなポイントとなることは間違いなさそうです。