2019.09.14

「あな番」は全員野球!
日曜ドラマ「あなたの番です」
プロデューサーのブレないリーダー力
プロデューサー 鈴間広枝

最終回では平均視聴率19.4%を記録。ネット上で「考察」と呼ばれる犯人探しが盛り上がり、ドラマ放送後には4週連続ツイッターのトレンド世界1位を獲得するという偉業を果たした日曜ドラマ「あなたの番です」。プロデューサー・鈴間広枝さんに成功の秘訣を尋ねると、「私が何かしたわけではなく、チームにいい人しかいなかったんです」と言います。

とはいえ、本作は「今日から俺は!!」「3年A組-今から皆さんは、人質です-」とヒット作が続くドラマ枠という大きなプレッシャーがある上に、日テレでは25年ぶりとなる2クール連続放送というチャレンジ。さらに、キャストが40人を超える大所帯という状況で、どのようにチームワークが生まれていったのでしょうか?
鈴間さんに、ドラマ制作に携わるようになったきっかけから現場での日々、社内連携の様子などを伺うと、そこには往来のリーダーとは一味違う、チームを率いていくための数多くのヒントがありました。

情報番組、バラエティを経て、社内募集の企画が通りドラマの世界へ

日本テレビに入った理由は、実はドラマが作りたかったわけではないんです。学生時代、ドキュメンタリー番組のディレクターをしていた方のゼミに入っていて、そういうものを作りたいと思って、民放では唯一ゴールデンタイムでドキュメンタリー番組があった日テレに入社したのですが、配属はワイドショー。情報番組を6年半ほど経験し、その後はバラエティへ。そして、「ザ!世界仰天ニュース」をやっている途中で、ドラマの企画が通り、「仰天」にいながら単発ドラマの現場に行かせてもらうことになったんです。

日テレでは、編成部から全社員に向けて企画募集が頻繁にあり、誰でも企画を出すことができます。ドラマの企画は、幼稚園の頃からドラマが大好きで、「こういうのが見たい。誰かが作ってくれたらいいな」という気持ちで出したのですが、ドラマ制作のプロデューサーについて、脚本作りからキャスティング、現場と一通り体験をさせてもらって……「ドラマを作るのも超楽しいじゃない!」となって手を上げて、ドラマ制作に異動しました。

はじめから全員野球で臨み、周囲のポジティブな反応を共有することでチームに自信を

「あな番」制作に当たっては、かなりのプレッシャーがありました。「今日俺」が当たって、「3年A組」が当たって、「日曜ドラマ枠はティーンに支持されるヒット作が出る!」という空気の中で、かなり渋い演技派俳優陣による連続殺人ミステリー。ティーンに刺さるのか、という不安はありましたが、はじめるに当たっては、「今までにないものを作るんだから、全員野球でやろう!」という気持ちがキャスト・スタッフとも、皆で共有できていたと思います。
異例の2クール連続で、キャストも多い。エッジが効いていて、とんでもない設定で、主人公だけでなく周りの人たちのキャラクターも粒立っている。凄惨な殺され方もするし、びっくりさせることも続く。視聴者に受け入れられるかはわからないけれど、おもしろいと思うからブレずにやっていこう。そういう作品に乗ってくれる気持ちが皆、強かったので、前半、世帯視聴率は6%台と決して良くない中でも、モチベーションは下がりませんでした。
4話、5話と物語が転がり始めると、視聴率には出ていないんですが、世の中がザワザワしてきて……キャストもスタッフも、会う人、会う人に「犯人、誰なの?」などと言われるようになったんです。私も「若い視聴者層がすごく見てくれている」などデータからわかる指標を現場で伝えるようにして、そうすると皆さんからも、「確かに、電車の中で女子高生が話してた!」とか、「娘がこんなこと言ってた」というような共有が増えていって、それがチームの大きな自信になったんです。ネット上の「考察」も自然と皆さん見るようになって、特に1話からずっと考察してくれていたYouTuberの動画は、キャストもスタッフもかなりの割合で、毎回、チェックしていました(笑)。

あと、スタッフに関して言えば、毎回、ワクワクするシーンが多くて、がんばろうという気持ちが回を追うごとに強くなっていったと思います。例えば、住民会のシーンで「ヨーイ!」となった時に、芸達者な俳優さんたちがそれぞれに緊張しながらも、周囲の出方を見ながら「わーっ」と一斉にお芝居をする。そんな演技を見せられたら、「これは楽しい! こんなの見たことない!」と楽しくならずにはいられませんよね。

自転車操業でも、どんな質問や相談にも答えられるように準備して、毎日、現場へ

今回の現場では、キャストやスタッフとのコミュニケーション量がものすごく多かったと思います。元々、現場が好きなのですが、打ち合わせや編集の時以外はずっと現場にいて、「こんなに現場にいる局P(プロデューサー)見たことない!」と言われるくらい(笑)。現場スタッフに「○○ちゃん、髪切ったね」みたいなベタな声掛けもしていますが、プロデューサーとして「なにか聞かれたら、すべて答えられるように準備しておかないといけない」という責任感がありました。

台本を書くのは脚本家さんですが、現場の窓口はプロデューサーなので、本当にいろんなことをキャストの皆さんとも確認しました。それこそ、先がわからないドラマなので、「こういう出方で大丈夫?」「いまのお芝居、怪しすぎた?」「この後、自分はどうなるんだっけ?」など、キャストの皆さんも自分からどんどん聞いて、相談して下さいました。後で聞いた話ですが、ある俳優さんは、いつもやり過ぎてないか不安で「あ、鈴間さんが笑ってるから大丈夫なんだ」と確認しながら演技してくれていたそうです(笑)。

スタッフとも、どこまで見せればいいのか、どの情報まで出していいのかなど、映り込む新聞や週刊誌も、一言一句までチェックしました。「袴田吉彦、新恋人発覚!!」という久住が菜奈にパッと見せるだけの記事でも(笑)。

一番大変だったのは、脚本作りです。9話、10話くらいからは自転車操業! 11話からは横浜流星さん演じる二階堂が登場するのですが、通常だったら撮影開始の1ヶ月前くらいまでに、少なくとも1話分の台本を渡します。でも、今回、新しい役に臨むにあたっての決定稿を渡せたのが1週間前くらいになってしまい……「こういう役で、とりあえずパソコンの練習をしておいてください」という状況だったのですが、インの時にはイメージ通りに演じていただいて、これはキャスト皆さんに言えることですが、本当にありがたかったです!

宣伝部、情報番組、バラエティ……外からの応援でチームはより強くなれた

実は、番組連動のLINEサービス「AI菜奈ちゃん」は、実際に作るには莫大な時間が掛かるので間に合わないだろうと、実際の制作は諦めていたんです。でも、宣伝部の方から「作ろうよ!」と言ってもらって、それからがんばっていただき、2週間くらいで完成させてくれたんです。多くの方に見ていただいたヒント動画も、宣伝部のアイデアで生まれたもの。SNSやネットと親和性の高い作品だったので、本当にいろんな方からアイデアをいただきました。

途中から、ホワイトボードに出てくる登場人物の顔を画面に小さく「ワイプ」で出るようにしたのも、バラエティの先輩が「わかりやすくなる」とアドバイスしてくれたおかげです。情報番組やバラエティの先輩方が応援してくれ、たくさんの番組に番宣で出させてもらったことも大きな力になりました。番組MCの方々が、「見てるよー、この先、どうなるの?」と主演の田中圭さんや原田知世さんに言ってくれたり、奈緒さん演じる「尾野ちゃん」や金澤美穂さん演じる「シンイ―」に会ってみたいとゲストとして呼んでくれたりもしました。そうすると、キャストの皆さんのモチベーションも上がり、今度はキャストの皆さんがスタッフのモチベーションを上げてくださる。そうやってチーム全体がどんどん、良い方向に進んでいったのだと思います。

最終回、19%台という結果は、本当に見てくださった皆さん、盛り上げてくださった皆さん、現場で汗をかいてくださったキャスト、スタッフのおかげだと思っています。

100人以上のスタッフがいて、今回は特にキャストも多く大所帯だったのですが、「私が特別に何かをした」ということではなく、「全員野球」というか、秋元康さんのアイデアと福原さんの脚本が発火点となって、「今までにない、おもしろいものを作ろうぜ!」という目的に向かって一致団結して、皆で楽しく汗をかけたのだと思います。大変だったけれど、ドラマ作りは本当に楽しいんです! これからも一生、現場でドラマを作り続けたいですね。
鈴間 広枝
日本テレビ「あなたの番です」プロデューサー
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開催日程 4月23日(木)16時~17時30分
5月26日(火)16時~17時30分
6月25日(木)16時~17時30分
開催場所 赤坂見附 日テレHR事務局
住所 東京都港区赤坂3丁目9−1紀陽ビル
講師名 吉田 和生
参加費 無料
定員 40名
懇親会 なし