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【公式レポート】日テレが考える
「自分らしく」働く人になるための
キャリアプログラム セミナー

2019.05.07

初めての 10 連休となった 2019 年のゴールデンウィーク。日テレでは「新しい世界を、まなぶ」をテーマに”ゴールデンまなびウィーク”を 4 月 29 日から 5 月 5 日にかけて大々的に開催した。その中でも本ページは、日本テレビの教育事業である「日テレHR」が主催したキャリアプログラムのレポートをお届けする。このプログラムでは専門家による講演の他、高校生たちのリアルな公開授業が実施された。

イベントスタート

まずは藤井恒久アナウンサーから「これからの日本の教育を考える上で、たくさんのヒントが生まれてくるプログラムではないかと思っております」とイベントの開催が宣言された。次に登場した林家三平師匠からは、噺家になったきっかけがユーモアを交えて話された。その内容は、大学時代の海外旅行の際に「隣に座っていたフランス人の方達が、自分はできなかった日本文化の説明を英語でしてくれて」、その人達に「日本に帰ったら自分 の国の文化を勉強しなきゃいけないよ」と言われたというものだった。そして、「これから生活していく中で、 転機がいつ来るか分かりません」と参加していた女子高校生たちに、今日のイベントが人生の転機になるかもし れないことを印象づけた。

①特別講演「自分らしくイキイキ働くために」慶應義塾大学大学院 SDM 研究科長 前野隆司教授

藤井アナと林家三平師匠の MC で会場が温まったところで、前野教授による講演が始まる。テーマは「自分らしくはたらく人になるために大切なことを幸福学の見地から」だ。初めに話されたのは「従来型の教育が変わりつつある」というものである。そして、教育が変わることで会社のあり方も変わっているという話にまで広がっていった。

前野教授:今は「教師が話をして生徒が話を聞く」という受動的なものから「主体的、対話的で深い学び」に変わっています。教育の仕方もみんながやりたいことをやっていく、思いで繋がって、オープンでみんながネットワークになる。こういった主体的な学びへの変化によって、働き方も主体的になっている。そういう時代がまさに来ているんです。

では、具体的に働き方や会社のあり方はどう変わってきているのか。それはピラミッド型とアメーバ型の対比によって説明された。

前野教授:これまでの多くの会社は社長を頂点に重役、課長、平社員がいるというようにヒエラルキーが形成されていて、ピラミッド組織になっていました。しかし、最近になって明らかになってきたことがあります。それは、幸福学の見地からすると、ピラミッド型よりもアメーバ型のようにフラットな働き方の方が社員は幸せになるというものです。フラットな会社の社員は、不幸せな社員より創造性が 3 倍、生産性が 1.3 倍高いという結果も出ています。

この変化は「元々の日本人の得意なやり方である」という発言も飛び出た。

前野教授:みんなで平和で調和的に生きていく。つまりフラット、平等でみんなが生き生きとして、思いで繋がっていく学び方や働き方がこれからの主流なんです。ゆっくり自分のペースで、長続きする幸せな働き方をしていく。こういう時代に変わりつつあるということです。しかもフラットな組織運営は日本人が得意としているあり方なのです。

『長続きする幸せ』と『長続きしない幸せ』の違いとは

そして前野教授から根本的な問いが会場に投げかけられた。「みなさん幸せになりたいですか?」。女子高校生も観覧していた父兄の方々からもあたたかい頷きが散見された。

前野教授:長続きする幸せと長続きしない幸せがあります。どっちがいいですか、みなさん。実は、長続きしない幸せは、地位財によるものです。地位財とは人と比較できる財です。例えばお金や地位です。これらを得ると一時的には幸せを感じるのですが、長続きしない幸せなんですよ。だからといって「金、モノ、地位を求めるのをやめなさい」と言っているわけじゃないですよ。大事なことは「地位財だけを目指しても幸せにはなれない」と知ることです。地位財による幸せは持続力がないですからね。

「地位財による幸せは長続きしない」。そうだとしたら私たちは何を目標に生きればいいか迷ってしまう。前野教授が提唱する「非地位財への幸せ」とはどういったものなのだろうか。

前野教授:非地位財とは他人との比較ではなくて、自分自身で考えて、幸せを感じられるものです。これを追求するには環境要因、身体要因、心的要因の三つが必要になります。日本は安全で平和、長寿の国ですね。だから環境要因と身体要因はすでに満たされています。

「長続きする幸せ」の三つのうち二つが満たされているのが日本。そうであるならば日本は幸福度が高そうであるが、実はそうではない。国連のレポートで証明されてしまっているようだ。

前野教授:国際幸福レポート(ワールドハピネスレポート)によると、日本は先進国中最下位の58位なんですよ。こんなに環境も良いし健康でもあるのに、幸福度が低いのです。私が着目したのはこのギャップなんですよ。

いよいよ前野教授の専門である幸福学の見地が披露される場面に差し掛かってきた。前野教授が分解した「幸福を実現する四つの因子」をここに掲載する。

【前野教授による「幸福を実現する 4つの因子」】

1.やってみよう因子(強い元気な幸せ):情熱/自己実現やらされ感ではなく、ワクワク感、楽しんでみる。

2.ありがとう因子(優しい幸せ):つながり/感謝/共感 感謝することで、愛情ホルモンが分泌される。

3.なんとかなる因子:前向き/楽観/3遊び心/ユーモア 後ろ向きや、悲観的な気持ちはパフォーマンスに影響が出る。

4.ありのままに因子:自分らしさ/個性

最後には女子高校生たちの明るい未来を願って、力強いメッセージで締めくくられた。 前野教授:休日にごろごろしていることが幸せではない。幸せとは、多様な仲間とともに、実現したいことに向かって「何とかなる」という前向きな思いをチャレンジすることです。これからも応援しています。

②高校生参加の デモンストレーション授業

前野教授による「幸福を実現する四つの因子」をインプットした後は、四つの因子を体験するキャリアプログラムのデモンストレーションが実施された。講師は日本テレビ社長室 企画部 主席プログラムコンサルタントの大澤弘子が務め、「キャリアアクシス=なりたい自分の軸」を見つけるキャリアプログラムが展開された。このパートは日本テレビ制作陣が作ったドラマを見て、女子高校生たちは社会人を疑似体験できる。その中から「自分らしく働くとはどういうことか」をイメージする時間である。 そして大澤から後のグループワークを活性化するヒントとして「成果が出るチームが持つ四つの特徴」が説明された。

大澤:これは日本テレビの番組制作におけるチームの力の分析から導き出したものです。

【成果が出るチームが持つ 4つの特徴】

1.情熱。スタッフ全員がやる気に満ち溢れています。

2.創意。落ち着いて考えてみたり、論理的に考えてみたり、何が正解か全員が知恵をしぼっている番組は長く続いています。

3.共感。心を遣うことです。みんなでフォローする、一緒に頑張るという共感の力を持っているチームです。

4.茶目っ気です。追い込まれてもその状況をちょっと楽しんでいる特徴があるんです。

会場からは「どこかで聞いたことのある話」という空気が流れている。それもそのはず。大澤からも「前野先生が仰っていた幸せの四因子と同じです」と明かされた。幸福学の見地からも、日テレ制作チームの現場の視点からも、幸せと成果は関連が深いことが分かっていたのだ。そして「ドラマで社会を疑似体験しながら、四つの因子を自分らしく、仲間と協働して使えるようになるプログラム」を女子高校生たちが体験していった。

大澤:グループワークのテーマは「人を傷つける可能性のあるニュース番組はなぜ必要なのでしょうか」です。

報道の意義を問う難解な問いである。プロにとっても難しいものであるはずだが、その仕事が社会に存在する意義を考えることは、社会人を疑似体験するという意味で理にかなっている。グループワークでは参加者の言動を一人の MC が見て、「4つの因子に該当する」と判断したらその因子の色のチップを渡すというルールだ。グループワークを終えた生徒の声を聞いてみよう。

生徒A:報道というものは一番身近にあるものです。そのため、報道したものがみんなにすぐ広まってしまうことだから責任を持って、伝えることが大切なのかなと思いました。

生徒B:報道があると今起こっていることをリアルタイムで知れるし、影響力があって、自分の意見だけではなくて、周りの人がどう思っているかも聞けて、私生活で必要なものだと思います。

生徒C:信憑性のある情報を視聴者に伝えることで、視聴者一人ひとりが自分との関連性を考えられて、意識を 変えられるところに報道の意義があると思います。

林家三平師匠からも、生徒たちにマイクが向けられた。

林家:異常にね、この班が静かっだんですよ、みなさん敬語使ってましたよね。どうしてですか?

生徒D:同じ班のメンバーが、学年も違って、これまで話したことがない人ばかりだったので、どうしようかなって思っちゃって。

初めての体験に戸惑いを覚えている生徒もいたようだ。

林家:こっちのグループは青のチップがたくさん配られてますね。理由はなんだったのかな。

生徒E:ひとりひとりの意見がしっかりしていたので、「創意」のチップをたくさん配りました。

このように発言内容から幸せの 4因子、「成果が出るチームが持つ 4つの特徴」を抽出できているグループも見られた。感想タイムが終わると、グループごとにどの種類のチップが何枚配られたかが計算され、大澤による解説が始まった。

大澤:成果が出る時は、実はチームで見ると4つの特徴がバランス良く出ていることが多いんです。一人で 4つの力を全て持っていなくてもいいんです。チーム全体で見た時に、4つの力がどれも存在するチームになると、成果が出やすいということを覚えておいてください。

そして最後にキャリアを考えるワークが始まった。大澤からキャリアを考える問いかけが発される。

大澤:CAS―DRP はキャリアプログラムなので、自分の未来をワクワクしながら考えたいと思います。

あなたがやってみたい仕事は何ですか?まだ決まってなければ決まっていなくても大丈夫です。何か知っている仕事、気になる仕事でも構いませんわないです。3つまで書いて OK です。それはどんな仕事ですか。その仕事は社会に対して、どんな意味を持っていますか。個人個人で書いてもいいですし、チームで話し合ってから書いてもいいです。

難解かつ初めてのテーマのグループディスカッションに取り組んでいた生徒たちも、この頃になるとワークに熱 心に取り組んでいたり、同じグループの人との話し合いが活性化していた。大澤から最後にメッセージが送られる。

大澤:どんな仕事も社会に対して、意味、意義があって存在しています。「何になりたい?」聞くと、なりたいものに目が向きますが、何になりたい以上に大事なことがあるんです。それは「どんなことがしたいのか」というものです。気になる職業名だけでなく、その仕事の、どの部分をやりたい自分がいるかを大事にしてください。

例えば看護師さんでも、病気を直すことに興味がある人もいれば、辛くて苦しんでいる人の側にいて役に立ちたいと思う人もいます。病院の雰囲気が好きで毎日そこで働きたいと思っている人もいるかもしれません。このように職業名だけでなくを「何をしたいか」を一歩つきつめて考えると、自分らしい働き方、キャリアを生きられると思います。

③アフターセッション(講評)

最後は出演者が壇上に上がり、学生に対して一言ずつエールを送った。

前野教授:今日は青色が多かったなど、チップの色に傾向があったチームが多かったですね。でも、みなさん和やかに取り組まれていたので、これからも続けていけば他の色もバランス良く出ていくのではと思います。

大澤:ドラマ映像は、実は全 6 回の連続ドラマなんですよね。回が進むごとに、驚きの展開を見せていきます。よりチームで、メンバー全員の脳みそをぶつけ合って思考を深めていただければと思います。

生徒からも実際にグループワークをしてみての感想が話された。

生徒A:自分じゃ分からないような考え方がチームの人から出たので、いろいろな意見をが知ることができれて良かったです。

藤井アナウンサーは「こちらの MC さんがとても上手でした」と、活躍していた生徒に自ら声をかけに行っていた。

生徒B:私以外みんな後輩なんですけど、後輩がしっかりしてくれてて、私もやりやすかったです。

最後は林家師匠が一言述べて、このイベントは幕を下ろした。

林家:私は「臨機応変」という言葉が好きなんですね。みなさんはまさにその「臨機応変」に、皆さんが協力して動いてらっしゃる姿がとても印象的でした。みなさんの姿を見ていると、これからの令和の時代はとても良くりそうという期待を抱けます。ありがとうございました!

④取材後記

この日のイベントは、前野教授の教授の学術的な講話からキャリアプログラムの体験という、頭も心も身体も使った凝縮された時間になった。参加した学生たちはこれから大学への進学や就職という人生の岐路に立つ。その時にこのイベントはどのように思い出されるのだろうか。学生たちがこれからつくる社会のあり方がとても楽しみである。

(取材・文・撮影:佐野創太)